パチパチと優しい音をたて、程よいサイズの炎が揺らめく。
そんな寛ぎの焚き火時間を過ごすなら、使う薪はよく乾いた広葉樹がベストです。

針葉樹でも焚き火は出来ますが、炎が大きくなりやすく、広葉樹に比べて短時間で燃え尽きてしまうため、針葉樹は焚き火用の薪というよりは、細かく割ったり、フェザースティックを作ったりなど、焚付け材・着火材として活用するのがおすすめです。

広葉樹の薪の特徴

広葉樹の薪は密度が高く(スカスカじゃない)、同じサイズの針葉樹薪と比較すると、ずっしり重く、硬いものが多いです。また、針葉樹と比べ油分が少ないのも特徴です。
油分も少なく、密度が高く、重い広葉樹の薪は、ゆっくりと燃え、頻繁に薪をくべなくてもよく、ゆったりとしたリラックスした焚き火が楽しめます。
そして、よく乾いた広葉樹の薪であれば、ススやタール、煙の発生も少なく、やかんや鍋などのキャンプギアの汚れも比較的抑えられ、後片付けの負担も減ります。

一方で、着火しづらかったり、着火のための焚き付け材や着火材を作ろうと思っても、硬いためナイフや手斧で割りにくかったり、ノコギリなどで切りづらかったりするデメリットもあります。

広葉樹にはどんな樹種があるの?

■ 楢(ナラ)

ナラは日本各地に分布する里山の雑木林でよく見られます。雑木林で良く見かける長細いドングリがナラの実です。一般的に「ナラ」と呼ばれているものは、コナラとオオナラ(ミズナラ)と呼ばれるものです。
オオナラは山間部や東北・北海道地方などに分布し、寿命も長く、巨木に成長するものもあります。
薪にすると火力が強く、火持ちも良く、たくさん採れるので流通量も多く入手しやすいため、焚き火や薪ストーブ用の薪として人気があります。オーク材として家具の材料やウイスキー樽の原料にも使われています。

■ 桜(サクラ)

ここでいう桜はいわゆるお花見で有名なソメイヨシノではなく、ヤマザクラのことです。
ヤマザクラは本州・四国・九州に分布し、シロヤマザクラ・オオヤマザクラ・カスミザクラ・オオシマザクラなど、「山に咲く桜」の総称として呼ばれています。
火力・火持ちはナラにはかないませんが、火力・火持ちが悪い訳ではないので、焚き火用の薪として十分使えます。
チップ状にしたものが燻製によく使われるように、燃やすと甘い独特な香りが漂い、その香りの良さで選ぶ方もいます。

■ 樫(カシ)

カシは関東以南の比較的温暖でやや乾燥している地域に分布し、民家の生垣や防風林などによく使われています。
カシの薪は“薪の王様”と呼ばれるほど火力・火持ちに優れており、備長炭の原料としても有名です。
成長が遅く、あまり流通しないため、入手しづらく高級品です。その硬さから鉄道の枕木などにも使われています。

■ 椚(クヌギ)

クヌギは岩手・山形以南の各地に広く分布し、里山の雑木林でよく見られます。ヒゲの帽子を被った大きめな球形のドングリがクヌギの実です。
カシと同じく、火力・火持ちに優れており、カシと比べると成長が早いので、昔から薪用の材として植えられ、使われてきました。
カブトムシやクワガタなどが樹液を求めて集まる木としても有名です。

■ 欅(ケヤキ)

ケヤキは主に本州・四国・九州の暖かい地域では丘陵部、寒い地域では平地に分布し、樹形が美しいことから公園の街路樹などに使われています。また、目が細かくきれいで、高級家具材や建築材として古くから多く使われています。
火力も強く、火持ちも良いので、薪として優れた材ですが、繊維が複雑に絡み合っているため割りづらく、薪としては扱いづらさがあります。

■ 林檎(リンゴ)

日本で多く栽培されているリンゴは、そのほとんどがセイヨウリンゴで、暑さに弱いため、高地や東北の寒い地域で植えられ、果実を収穫するために育てられています。
津軽地方の人々の間でよく使われる薪の原料であり、香りが良いため人気がありますが、剪定や農家の廃業時にしか材がでないため、数が少なく、ほとんどが地元で消費されてしまうため、流通量も少なく、薪として大変貴重なものです。
燃え尽きやすく、きれいな灰になります。

■ 白樺(シラカンバ・シラカバ)

シラカンバは高原や寒冷地などに分布し、白い樹皮が特徴でアイスの棒や爪楊枝などの原料として使われています。
広葉樹の中では比較的油分が多く(樹皮部分)、よく燃え、火持ちはあまり良くありません。
特に樹皮は着火材としてとても優秀で、よく燃える材です。多少濡れていても火がつくため、非常用の着火材として重宝されていました。

針葉樹の薪の特徴

針葉樹の薪は広葉樹の薪と比べて密度が低く、同じサイズの広葉樹薪と比較すると軽く、爪で押すと爪痕がくっきり残るくらいの柔らかいものが多いです。また、油分が多いのも特徴で、よくアロマオイルの原料に使われたりもします。
油分が多く、密度が低く、軽い針葉樹の薪は、火付きがよく、勢いよく燃えるので、早く暖をとりたい時や、着火時の焚付け材・着火材として活用されています。
材質が柔らかいので、バドニングやフェザースティック作りもしやすく、焚き火の際は広葉樹薪にセットで数本持っていくと、スムーズに着火でき、非常に重宝します。

一方で、乾燥が進んだものでも広葉樹に比べるとススやタール、煙は出るので、調理器具などのキャンプギアのお手入れはそれなりに手間がかかります。また、広葉樹薪と比べると燃焼時間が短いので、長い時間焚き火を楽しむとなると、それなりの量を持参しなければならず、かさばるなどのデメリットがあります。

針葉樹にはどんな種類があるの?

■ 杉(スギ)

スギは北海道から屋久島まで広く分布する日本の固有種で、建築材として古くから馴染みのあるものです。
スギの薪は手に入りやすく安価なので、キャンプ場やホームセンターなどで多く売られています。
火付きは良く、よく燃えるので、焚き火や薪ストーブの着火材・焚付け材として使われています。
柔らかい材質でクセの少ない素直な木なので、薪割りや加工もしやすいです。

■ 檜(ヒノキ)

ヒノキは福島以南から九州まで広く分布し、木目が通り、香りもよく、最高品質の建築材として古くから使われています。
火付きは抜群によく、非常によく燃えますが、その分火持ちが悪いので、薪としてはあまり使われていません。
木っ端や細割りのものを焚付け材や着火剤として使われています。

■ 松(マツ)

マツは本州・四国・九州と広く分布し、海岸付近や岩山など荒地でもよく育つので、荒地や砂漠の緑化などにも使われます。日本においてはアカマツ・クロマツが多く、一般的に「マツ」と呼ばれるものはこれらを指すことが多いです。建材や盆栽などに使われており、なじみのある木です。
油分が多いため、火付きがよく高火力で燃えます。スギと比べると密度が高く、針葉樹の中では火持ちが良い方です。
他の薪に比べてススやタール、煙も多く出やすいので、キャンプギアが真っ黒に汚れてしまうのが難点です。

いかがでしたでしょうか。

上に記した どんな樹種でも焚き火は出来ますが、やはり焚き火に使う薪は広葉樹がベスト!かと思います。
針葉樹もその特徴を生かして着火材として活用すれば、ストレスの少ない快適で楽しい焚き火時間を過ごせるかと思います。

キャンプなどに行かれる際には、よく乾いた質の良い広葉樹薪と焚付け材となる針葉樹薪をあらかじめ用意して、ゆったりと心豊かに炎を眺める大切な時間をお過ごしください。

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    世界遺産「白神山地」の里山整備で出る間伐材や伐期を迎えた木材から作られるカーボンニュートラルな薪です。

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