この春、メヤマキのラインナップに異色の商品が加わりました。

それは、「ナイフ」。

なぜ薪屋のメヤマキがナイフを取り扱うことにしたのか?
そして決して安くないこのナイフの何がすごいのか?

バイヤーとしてこのナイフに目を付けたメヤマキスタッフの嶋中さんにインタビューしました。(聞き手:虎澤)

商品の基本情報、「ナガサ」という言葉の意味などは、商品紹介ページを参照ください。

  • メヤマキ
    Outdoor knife手づくり一点物ナイフ!「小ナガサ」を限定販売

    マタギが用いる狩猟刀(山刀)をベースにした鍛冶職人の手打ち両刃ナイフ。使い込むほどに味わいが増す、長く愛用いただきたい価値ある一本です。

    ナイフの販売・通販


嶋中さんにインタビュー

まずは、この小型万能ナイフ「小ナガサ」の特徴を教えてください。

秋田県鹿角(かづの)市の関(せき)刃物鍛冶工場というところで作られたナイフです。関さんという鍛冶職人が作っています。
まず知ってもらいたいのは、ひとつひとつが手作りの一点物だということ。一個一個、数ミリの世界で微妙に大きさも違います。
この刃物のすごいところは、焼き入れするときにできる酸化膜がきれいに入っているところです。この片面の黒い部分です。ここがすごいとわかるか。この黒さがセールスポイントなんです。

黒いのが特徴的なのはわかるんですが、どうすごいんですか?

ふつうはこの酸化膜は削って磨いちゃって銀色のぴかぴかの面になるんです。でもこうして膜を残すのは、いわゆる昔からの鍛冶屋がつくる刃物。綺麗に叩くからできる技術で、技術がないと黒と透明のまだらになったりするんです。この膜をきれいにつくれる職人は、とくに若い人にはいないと思います。珍しいです。

そんなすごい技術を持った鍛冶職人に出会ったわけですね?

そうなんです。鍛冶職人の関さんを知ったのは、たまたま一緒に仕事していた人からの紹介で、いい刃物作ってる人がいるよと。実は自分の母方のルーツが鹿角にあって、工場が出身地の近所でもあったので、これはぜひ紹介してほしいとお願いしました。
関さんはまだ若いですが、中学校くらいから弟子入りして刃物を作ってるので、十数年の経験があります。作ってる現場を見させてもらいましたが、ほんとに手間をかけて作っているのがわかりました。

刃の両面に文字が刻印されていますね。

はい。「関製」はその名のとおり、関さんのところで作っているから。刃物で有名な岐阜県の関市のことではないですので、誤解されぬよう(笑)
「安来鋼(やすきはがね)」は使っている鋼の材料の名前。キャンプ用のナイフでこの鋼を使ってるナイフはないんじゃないかと思います。
裏面にある「石野」というのは関さんが作っている工場の地名ですね。
この刻印で誰が何を使ってどこで作っているのかがわかる。職人が「自分のものだ」という証、これなら世の中に出していい、というプライドみたいなものですかね。

ほかにこのナイフの特徴はありますか?

作りとして、堅い鋼が真ん中に入ってて、周りに柔らかいのを張り合わせてある。強度があってしなやかさもある。
手が刃に当たって切らないように、「つば」が付いています。これも一個一個つくっている。大変です。
柄の部分の木材はカシ(樫)。文字通り堅い木です。今後、こういう木の部分は我々の地元・西目屋から出すとかできたらいいなと思ってます。

付属している皮のケースも良さげですね。

ケースは関さんの知り合いの別の皮業者さんに、特別に型を取って作ってもらっています。これも最初硬いんですが、使い込むうちに馴染んでくると思います。

どのように使うことを想定していますか?

キャンプの普通の使用シーンで考えると肉や果物を切ったり、魚を捌いたり、いろんなシーンで使えます。もちろんバトニングやブッシュクラフトにも。

オールマイティに使える?

そうですね、使いやすい両刃で、汎用的なつくりにしています。
いわゆる「ナガサ」という東北地方の狩猟を生業にしていた人たちが使っていた山刀の小さいバージョン、ということで「小ナガサ」。扱いやすくて、丈夫。ほかにもいろいろな使い方はできると思うので、オリジナルの使い方を発見してほしいです。そうすることでこのナイフの価値・魅力が増すと思います。

そもそもどうして、このナイフをうちで扱いたいと思ったんですか?

まず大前提として、メヤマキのオンラインショップを訪れてくれる人たちは、こだわりのあるキャンパーさんが多いと思うので、キャンプの必須アイテムで薪割りにも使えるナイフはラインナップに加えたいなと。そのうえで地元で自分が良いと思えるものがあれば、と思っていました。
メヤマキは青森だけれど、秋田はすぐ隣だし、我々のホームの西目屋村と今回の鍛冶工場のある鹿角市は片道1時間くらいと近い。先に言ったように私のルーツでもある。広い目で見れば、同じ北東北ですし。
もっと言えば、場所は関係ないんです。いいものであれば。自分の想いとして、「誰と仕事をするか」がすごく大事だと思っています。関さんと一緒に仕事をしたい、このこだわりを世の中に出したい、そう思えたんです。

青森と秋田をつなぐ道

ふるさとに共感できる良いものがあれば、たくさんの人に知ってもらいたいですもんね。

自分達にできるのは人物やモノ、そしてそこにあるストーリーに共感して良いものを世の中に出すこと、その手助けをしたい。それがやりたくて今の仕事をしている。西目屋の薪だってそうです。
今回はメヤマキとして薪や炭以外のモノを扱う第一弾(※)。だから個人的にすごく思い入れが強いです。今後はひょっとしたら薪と全然関係ないものも出てくるかもしれない。

(※)食用のリンゴをセットにした「青森のリンゴとリンゴ薪セット」は前から期間限定で販売してますが、あくまで主役は薪。主役を張る商品として薪以外は初めて。

今回私たちが販売させてもらうことについて、鍛冶職人の関さんは何か仰ってましたか?

実は関さんの刃物の取り扱い店は非常に限られています。今回特別に販売していいよと言ってもらえました。「もっと高く売りたい」といったら、「やめてくれ」と。価値としては絶対にもっと高い値段でもいいと思うのですが、関さんはあまりにお客様が手の届かない商品にはしたくないんでしょうね。

それは優しいですね。

決して安いものではないですが、刃物にこだわる人にとってはべらぼうに高いものでもないと思います。ただナイフを買うのではなく、作ってる人の想いを汲んで使ってもらえると嬉しいです。

最後に、興味をもってくれているお客様に向けて。

刃物好きにはたまらない商品だと思います。10年20年愛用してもらいたいですし、使い込むと相当いいものになると思います。メンテナンスやアフターフォローの案内も、今後していきたいと考えています。

そんなバイヤー嶋中さんと職人の関さんの想いの詰まった「小ナガサ」、ぜひ使ってみてください。

熱く語り過ぎました。本当は動画で語って皆さんにお伝えしたいですね笑