焚き火を囲みながら時間を共有すると、自然と腹を割ってつい本音で話をしてしまうものです。

夫婦で。親子で。友人と。

火の前で ありのままの自分を気兼ねなく表現し、他者の考えや価値観を否定せずに受け入れる中でお互いの信頼や結束が生まれ、自ずと一体感が醸成されます。
そして、何をするわけでもなく、無理に話をする必要もなく、ただ火を眺めるだけでも成立するのが焚き火の不思議な力でもあります。

そんな魅力的な焚き火ですが、ナイフなどのさまざまな道具や火を扱うので安全には十分注意しなければなりません。
安全への配慮を怠ったばかりに、楽しいはずの焚き火が大きなトラブルとなってしまっては、元も子もなくなってしまいます。

そこで、焚き火の際に想定される事故の事例を挙げ、それらをどう「予防」するかを考え、安全に焚き火を楽しむためのポイントを解説したいと思います。

前回の「火災・ボヤ」「やけど」の予防につづき、今回は、「ナイフなど、刃物によるケガ」の予防について解説します。

【刃物を使う際に想定される事故例 その1「自分を傷つける」】

・バドニングをしていた時、勢いあまって自分の太ももにナイフが当たった。硬い生地の厚手のズボンを履いていたため、ズボンが切れ、少し血が出た程度で済んだが、危うく大怪我をするところだった。

・暗くなってきて手先が見えづらくなってきたが、そのままフェザリングの作業を続けていた。見づらかったので見やすい位置にナイフを近づけて作業をしたところ、普段の使い方と違う慣れない使い方となり指を切ってしまった。

・なるべくナイフを持つ右手を動かさずに小割りの薪を削っていたが、ナイフが引っかかり、薪を持っていた左手から薪が勢いよくすべり、手のひらを負傷した。

◯予防のポイント

①刃物が動いた先に自分の身体がないようにする
バドニングをしようと薪でナイフを叩いた瞬間に、割ろうとしていた薪が倒れるとナイフが勢いよく自分自身に向かって来ます。
その向かった先に自分の身体があれば、大きな怪我に繋がってしまいます。
特に股を開いた時にできる内腿と股間のあたりは動脈が走っており、ナイフなどが当たるととても危険な場所です。
「もしも」を考え、ナイフが動く先には自分の身体がないようにナイフを扱う事が大切です。

②刃物が動く範囲を狭める
ナイフを持った手の可動域が大きいと、その分、勢いよくナイフが動きます。
例えば、ナイフを持った手は伸ばして固定して、削る木の方を動かすなど、出来るだけナイフが大きく動かないように扱う工夫が大切です。

③暗くなってからの刃物作業は作業箇所を明るく照らす物を使う
暗がりでの作業はどんな作業も危険です。全体的に明るい方が良いですが、手作業の場合は、最低限手元をしっかり照らして作業の状態が見えるようにする事が大切です。

④刃物で作業をする際は、革手袋を着用する
予防をしながらも、もしもに備えて革手袋を着用しておけば、指や手首などを大きく傷つけることは防げます。薪などを持つ時も、革手袋を着用しておけば、ささくれたとげ状の木によって手を怪我することがなくなります。作業は少ししにくくなりますが、安全には変えられません。

 

【刃物を使う際に想定される事故例 その2「他者を傷つける」】

・すぐ使うからとシース(ナイフケース)にしまわずに置いておいた。子どもが好奇心からナイフを触り指を切ってしまった。

・手斧で薪を割ろうとした時、手から滑って手斧が飛んで前にいた人の足に当たってしまった。幸い、地面で一度バウンドし、刃の部分が当たらなかったため出血するような大きな怪我にはならなかったが、かなり肝を冷やした。

・焚付け材にしようと拾った枝の小枝をナイフで切り落としていた時、勢い余って隣にいた人の腕を切ってしまった。

◯予防のポイント

①刃物は使う時だけ刃を出すようにする
どんなに短い時間であっても、刃物は使う時だけ刃を出すようにすることが大切です。使わない時はすぐにケースにしまうなり、折りたたみ式のものは刃を折り畳みましょう。

②柄を持つ手が滑らないようにする
ナイフや手斧など、刃物のグリップが滑りやすいものについては、革手袋や滑り止めがついている手袋などを使用し、滑らない状態で作業をすることが大切です。

③刃物が動く先に人がいないようにする
手に持った刃物が届く範囲に人を入れないようにすることが大切です。特に前方や後方など、刃物が動く方向は何かの拍子に刃物が手から飛んでしまうこともあるので、その方向に人がいないよう注意し、十分な距離をあけましょう。ナイフや手斧、ナタなどの刃物は便利な道具ですが、扱い方を間違えると凶器になってしまいます。

ここに書いた事例はほんの一例です。

どういう扱い方で扱わなければならないのか、どんな危険があるのか、何を知っていなければならないのか、しっかり調べ、安全な扱い方を覚えましょう。